日向坂46

坂道小説スレ

更新日:

1走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ 3f7c-/+Oc)2020/06/26(金) 21:13:09.24ID:gDRDDfhU0
乃木坂・欅坂・日向坂のメンバーを登場人物とする物語を執筆するスレです。
現在籍メンバーだけでなく、卒業したメンバーを対象としてもかまいません。
誰でも自由に書いてください。



2走り出す名無し(愛知県) (ワッチョイW 3fb8-2SCr)2020/06/26(金) 21:16:40.77ID:avqW7NkS0
続けたまえ

3走り出す名無し(茸) (スップ Sd5f-Uimh)2020/06/27(土) 11:26:50.39ID:3Rr8Y83id
浣腸先生降臨はよ

4走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:37:16.29ID:7G2SynpF0
ではせっかくなので一作

5走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:39:12.73ID:7G2SynpF0
『クラクション、ジャンクション』

彼女の名前はサーキットに由来する。

突然そんなことを思い出したのは、彼女が近づいてくる途中に人混みを避けながらクラクションの口真似をしたからだ。
厚めの唇を尖らせていたが、口角は軽い。
停止線手前で計算したようにブレーキをかけるタクシーのように、僕の前に適度な距離を保って彼女は立ち止まった。

彼女はグラスに口をつけた。
口紅の赤みのせいか、ジンジャエールのグラスがシャンパンに見えた。
「お久しぶりね」
わざとらしいキザな口調、戯けた表情もそのままだ。

久方ぶりの、そしていつもどおりの富田鈴花の姿だった。
(続く)

6走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:40:11.06ID:7G2SynpF0
正直言って、富田が声を掛けてきたことには多少の驚きがあった。

二回目の高校の同窓会は、お盆休みも相まってか、五十人を超えている。
彼女はそのほとんど全員と友達で、会の最中引っ切り無しに声を掛けられていた。
そろそろお開きにしようかという声が上がりそうな雰囲気になった頃、少し遠いテーブルからまっすぐに僕の方へ向かってきた。

たった今彼女がかき分けてきた五十人を超える同級生の半数以上の名前を僕は知らない。
高校三年の秋、親の都合で突然の転校を余儀なくされ、わけもわからないままの卒業であったからだ。
つい二年前のことであるのにほとんど記憶にない。
そんな道路に転がった空き缶のような思い出のなかにも微かに甘い香りがするのは、他でもない富田によるものである。

7走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:41:07.94ID:7G2SynpF0
初秋、あるいは晩夏と呼ぶべきだろうだろうか。
すずしい風が吹く日だった。

「えー、今日から皆と一緒に学んでもらう…」
テンプレ通りの文言、短くなった白いチョーク。
その時の心境は浮足立っているというよりかは、哀しいという方が近かった。
いずれにせよクラスには緊張気味の顔に映っていただろうから問題はないはずだ。

自己紹介が終わるとすぐに授業が始まった。
転校生毎度おなじみの周りを囲まれる情景は休み時間まで持ち越されることになった。
ただそれにより、1時限のあいだはずっと好奇の視線がちらちらと飛んできていた。
できるだけ目をそらすように努めていたが、授業の途中、一瞬だけ視線の端の人物に目を奪われた。
それが富田だった。
彼女は漢文を音読するために立ち上がっていたのだが、想像していたよりも遥かに背が高く、また想像していた声とも違った。

8走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:41:52.41ID:7G2SynpF0
2限目の音楽の授業では、もう完全に目が離せなくなっていた。
歌のテストがあり、何故かわからないが僕も歌わされた。
「まぁ適当に歌ってくれー」と先生に言われたが、転校初日なのに滅茶苦茶である。

歌い終わってホッとする間もなく、富田の順番になった。
息を短く吸い込む音が聞こえたあと、歌声が響く。
ひとつも音程を外していない。少なくとも有線で流れてきても違和感を覚えないほどには十分にきれいな声だった。

そして何より、楽しそうに歌っている顔が、ミュージカルを連想させた。
もちろん歌の技巧にも感心したが、聞いている者を思わず微笑ますような力があった。

彼女のことを性格がいいと言う人もいれば、その正反対のことを言う人もいた。
数ヶ月過ごしてみた僕なりの結論は前者の方だった。
目立つというのはそれだけで色々な評価を集めることでもあるが、ともかく富田鈴花が常に議論の中心にいたことだけは間違いない。

僕の彼女に対する評価は、転校初日のたった一日だけの出来事に集約されていた。

9走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:42:33.02ID:7G2SynpF0
校門の前でふと立ち止まっていた。
別に何かを見つけたわけでも、思い出したわけでもない。
ただ、帰る方向が分からなかった。
登校は親に送ってもらったし、新しい住所は今朝提出して職員室のデスクに眠る書類一枚のみだった。
両親とも仕事中だから電話もつながらない。

「転校生くんじゃーん」
彼女が声を掛けてくれるのは、なぜか帰り際が多かった。
「あぁ…えっと…」
わざと名前を知らないふりをした。本当は一番覚えている名前だのに。
「富田、富田鈴花。すずかの由来は鈴鹿サーキット。覚えやすいでしょ」
何万回も繰り返してきたかのような言い回し。
そう、その自己紹介の仕方はまるでアイドルのようであった。
特別なことを言っていないのに、一発で聞いている者の頭にプロフィールを植え付ける。
もちろんそんなことされなくたって、僕は彼女の名前を一生覚えていただろうけど。

「途方に暮れるてんこうせー、助けてくれるじょしこうせー」
何だそれは。急に始まったラップに困惑した。
そして彼女は続けて「どうしたんですか?」と言った。
人物像が乖離している。

僕が帰る方向がわからない旨を伝えると、何か目印になるものはなかったかと聞いてきた。
コンビニ、ファミレス、小学校、バラバラに思い出した順番から口走っていくと。
わずか数秒で彼女はその付近であろう町名をいくつか提示した。

「よし、困ったときはお互い様。一緒に帰ろう」
彼女は言った。

10走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:43:11.32ID:7G2SynpF0
自転車のチェーンがカチャカチャと小気味よく回転している。
その音は家の方向とは全く関係のないところまで運ばれていた。
なだらかな丘陵をもう随分と長く自転車を押す彼女とともに歩いている。

彼女が小径へ逸れた。
「ほら見て。すごいでしょ」
そう言われて顔を上げると、うねった道路が見える。
見たところ高速道路のジャンクションだった。
僕が何と返答しようか迷っていると、急に清々しい叫び声が鼓膜に突き刺さった。
横を見ると、彼女は笑っている。
「あーすっきりした」
そしてまた、歌のテストの時の楽しそうな表情に戻った。
「こうでもしなきゃやってられないもん。私ね…」

11走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:43:48.66ID:7G2SynpF0
富田鈴花の夢はアイドルだった。
それは非現実的な夢であるが、富田の場合はその夢に合点のゆく人物像を持ち合わせているようにも見えた。
他人事のように「頑張って」と言うのは、少し無責任な気がした。

「よくね、ここから飛び降りた時の夢を見るの」
「それでどうなるの?」
「結果は毎回違う。大怪我することもあれば、無傷で済むことも、時には空を飛べることだってある」
「それで?」
「別にそれは何でもない。でも、アイドルになるってそういうことなんだろうななんて思ったりする。ひとたび勇気を出したって、結果どうなるかわかんない。それが怖い」

彼女がジャンクションを見つめる。
ゆるいクラクションがこちらに届く。
「なれるかな?」
今思えば、その時彼女は分岐点に差し掛かっていた。
わずかに震える唇が、僕が見た高校時代の彼女の最後の感情表現だった。


12走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:44:38.34ID:7G2SynpF0
明朝の便で帰っても十分間に合うスケジュールではあったが、富田がクルマで空港まで送ってくれると言うので、おとなしくお暇することにした。
すでに二次会へ動き出しているその他大勢とは特に語り合うこともないし、素直にクルマへ乗り込んだ。
予想通りと言うべきか、窓に流れる風景は空港とは全く違う方へ向かうものであった。

「もう免許取ったんだな」
どこへ向かっているのかと突っ込むべきか迷ったが、もう行き先は分かっている。
「今年の春休みにとった。暇さえあればドライブしてるよ」
「いつもひとりで?」
「高速が好きで走ってるだけだから、一緒に行ってくれる友達なんかいないよ。そういえば、アメリカの大学でしょ?すごいなぁ」
「まあ一応」
そう僕が言った時、ちょうど目的地にたどり着いた。
彼女はすぐにクルマから降りた。

「わたし…わたしなんか、あの時結局怖くなっちゃって飛び出せなかったもん。やっぱ君はすごいよ」
「富田」
「うん?」
「ごめんな」

14走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイ 7f55-0mh+)2020/06/27(土) 13:47:03.30ID:7G2SynpF0
欅坂46/「制服と太陽」より

15走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ 3f7c-/+Oc)2020/06/27(土) 22:09:51.03ID:VD+w8AQC0
>>13
軽やかでスタイリッシュな文体は読んでいて小気味がいいですね。

時系列を逆にし、クライマックスの少し前を冒頭に持ってきて、「いったい何なんだ」と読者に注意を喚起させた後、
追憶によって過去に遡るというのは小説の典型の一つですが、あざとくなく自然です。

富田の得意(?)なラップ的な韻を思い起こさせることだけを狙ってタイトルを付けたと思いきや、
「クラクション」と「ジャンクション」は隠喩になっているんですね。
前者は夢を諦めきれていないことの隠喩に、後者は人生の大きな分岐点の隠喩に。

16走り出す名無し(大阪府) (ニククエW 7f55-m9zT)2020/06/29(月) 22:02:37.25ID:MG7WKyWD0NIKU
>>15
物語の基本って日常→非日常→日常であると思うのですが、この非日常が過去であるパターンが大好きです。

17走り出す名無し(東京都) (ニククエ 0f7c-/+Oc)2020/06/29(月) 23:58:41.37ID:G3garOPX0NIKU
>>16
なるほど、非日常を求めるのは過去にというわけですか。
たしかに、それが小説としては王道でしょうね。
大阪府さんはその巧みな筆使いは小説的で、多くの小説を読んできたというのは判断でき、王道を求めるというのはよく分かります。

ただ、個人的には評論やノンフィクションを小説よりも読んできたので、その反動として小説では思い切り荒唐無稽なものに惹かれます。
ドストエフスキーは「ストラーホフ宛の手紙」の中で次のように書いています。
>私は現実というものに独特の見解を持っています。
>大多数の人がほとんど幻想的なもの、例外的なものと見なしているものが私にとっては時として現実の真の本質をなしているのです。
>現象が日常性やそれに対する公式的な見方は私に云わせるとまだまだリアリズムではありません。

百人いれば百通りの小説の好みや評価の仕方があると思うので、何が正解ということもないのですが、非日常を過去よりは幻想に求めるというほうが個人的には好みですね。

18走り出す名無し(茸) (スフッ Sd5f-i7Rh)2020/06/30(火) 14:52:54.88ID:K3fShD9Gd
載せたいんだけど
完結しない可能性99%でもok?

19走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ ff8f-c0lz)2020/06/30(火) 15:00:55.50ID:/ZNjME+V0
「菜緒。ねえ菜緒」
その声に小坂菜緒が目を覚ます。
「ーーえ?」
虚を突かれた菜緒がはっと顔をあげると、机の前に金村美玖が立っていた。
菜緒があたりを見回すと、席について授業を受けていたはずのクラスメイトたちはいつの間にか自由に動き出している。授業中の静寂はすでに消え、おしゃべり声が混ざり合う騒がしさが教室を満たしていた。
「もう、また寝てたでしょ」
形の良い眉を僅かに寄せ、切れ長な目を困ったように細めて、金村が咎めるような口調で言う。
「ご、ごめん・・・」
机の上に授業のノートーそれも授業の板書がなかばで途切れてしまっているーを広げているのは今や菜緒ひとりだけである。
当惑した顔をしている小坂に金村が微笑みかける。
「ノートならあとで見せてあげるから。ごはん食べよ?」

20走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ ff8f-c0lz)2020/06/30(火) 15:05:19.61ID:/ZNjME+V0
「菜緒~美玖~」
小坂の机でふたり一緒に昼食をとる菜緒と美玖のもとに、よそのクラスから宮田愛萌がやってきた。
「どうしたの愛萌?」
弾む足取りに髪をふわりと波打たせ、宮田愛萌は二人に愛らしい笑みを向ける。
。そして、他の生徒に聞こえないか、周囲にちらりと目をやってから、
「あのさ、またお願いしたいんだけど?」
と、二人に顔を近づけて小声で言った。
「お客さん?」菜緒も小さな声で返す。こくりと愛萌が頷く。
「いつ?」と金村。抽象的な言い方であったが、ふたりとも意を得ている様子だ。
「二人の都合のいい時でいいよ」
「じゃあ、あしたは?」美玖が菜緒に顔を向ける。
「うん大丈夫」菜緒が頷き、愛萌を見上げる。「いい?愛萌」
愛萌も頷き返す。
「わかった。伝えとく。じゃあ、明日の放課後、うちに来てね」

21走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ ff8f-c0lz)2020/06/30(火) 15:08:48.96ID:/ZNjME+V0
菜緒たちが暮らす町は、日向の国の中心地から離れた結構離れた場所にある。
地方都市のさらに郊外なので、いわば田舎のさらに田舎ーーあるのはほとんど住宅ばかりで、商業施設といえば大きめのスーパーマーケットとドラッグストア、あとはホームセンターぐらい。
地域のなかにはぽつんぽつんと小山が点在し、昔の名残かーーわずかばかりの面積の田んぼが、ところどころに残っている。計画的な開発が行われるでもなく、古い木造の民家と新しく建てられた小ぎれいな住宅が混在し、
人間の手がつかなかった小規模な自然が半端にちりばめたようにあとの余白を埋めている。
 そのなかにある地域の氏神を祀る宮田神社は、宮田家が代々神職を務める神社である。
神社の周囲を囲む立派な木々が、まわりの住宅と神社を隔て、しっかりとおおきな石で作られた基礎の上、周辺より一段高いところに神社は建っている。

22走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ ff8f-c0lz)2020/06/30(火) 15:22:07.68ID:/ZNjME+V0
神社の敷地内、参道の脇に建つ社務所の一室で、紅白の巫女装束に身を包んだ宮田愛萌が今回の依頼者の応対をしていた。
「では今回の占いの内容は、なくした指輪の場所を教えてほしい、ということでいいですね」
「本当に、わかるんですか」と依頼者ーー30代の女性は言った。
 依頼者の女性は、数日前、神社の表にある掲示板に張られた紙を見て愛萌に問い合わせをしていた。その張り紙には、宮田神社ではお祓いのほかにも占いもしており、仕事や恋愛、困りごとや悩み事のほか、失くした物の場所まで占えるとあった。
 愛萌は、不安と怪しむ気持ちが半々といった表情を浮かべる女性を安心させるように、柔らかく微笑む。
「絶対、とまでは申し上げられないんですけど、でもお力になれると思います。では、占い師をお呼びしますね」
そういって、愛萌は部屋の戸を開ける。


23走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ ff8f-c0lz)2020/06/30(火) 15:31:11.62ID:/ZNjME+V0
入ってきたのは宮田と同じ巫女装束に着替えた小坂と金村であった。
学校の制服を脱ぎ、巫女の赤い袴を履き、純白の衣に袖を通した二人が、おなかの前で手を重ね、しずしずとお辞儀をした。
「この子たちが・・・?」
依頼者の女性が、二人の姿ー占い師というが、来たのは愛萌と同じぐらいの年齢の少女たちだーを見て驚いた顔をした。
「ですよね。皆さん驚かれます」愛萌が少し苦笑する。
「でも大丈夫です。どうぞこちらに」依頼者の当惑をそのままに、女性を部屋の奥に置かれた木台へと案内する。
「どうぞお座りになってください」円卓状の木台の周りには三つの円座が敷かれている。その三つに菜緒と美玖そして依頼者が座る。
「『こっくりさん』をご存じですか?」
そういいながら、横から愛萌が木台の上に大きな紙を広げた。
上質な和紙で、そこには格子状に線が引かれ、その枠の中に筆で50音のひらがなが書き込まれている。上のほうには別に二つの枠があり、そこには『はい』と『いいえ』が書かれている。

24走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ ff8f-c0lz)2020/06/30(火) 15:35:11.89ID:/ZNjME+V0
「『こっくりさん』・・・五円玉に指をあてて動かす、あれですか?」
木台の上に広げられた文字盤から連想した女性が答える。
「そうです。この神社では、『こっくりさん』の力を借りて、占いをするんです」宮田が説明しながら、文字盤の上に一つの5円玉硬貨を置いた。窓から差し込む夕べの斜光を受けて、五円玉がオレンジ交じりの黄金色に輝く。
「こどものころに遊びでやったことがある人もいるかもしれませんね。ただまあ、誰かが5円玉を動かしてるとか、あまり信ぴょう性がないように思われてますけど。」
愛萌がそう前置きしてから「しかし、私たちの占いは違います」とはっきりした口調で女性に説明する。
「いまからこの二人が、神の使いである狐様をここに下ろします。そのお力を借りて占いを行います」そして愛萌は美玖と菜緒に目をやった。
二人が頷き、木台の上に右手を出す。そしてその人差し指を五円玉に当てた。
「さあ、こちらに人差し指を当ててください」
「はい・・・」愛萌に言われて女性は、恐る恐るという感じで、菜緒たちが指を置く五円玉に自分の指をあてた。
それを待って、菜緒と美玖が二人視線を交わし、口を開く。
「こっくりさんこっくりさん。いらっしゃったら返事をしてください」
ぴたりとそろったふたりの言葉の後、しばらく無音の時間が流れる。
依頼者の女性が、緊張した面持ちで指の先にある五円玉を見つめる。
すると静寂の中で、五円玉がす、と動き始めた。

25走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ 4fed-/+Oc)2020/06/30(火) 22:02:24.98ID:FtNOu63q0
>>18
もちろん、どうぞ。
というか、水道や電気やガスと同じく、5CHは誰でも利用できるインフラですからね。
メンバーへの酷い中傷などのきわめて悪質な書き込みでなければ、スレ主であろうがなかろうが、誰も文句を言う筋合いはありませんよ。

26走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ 4fed-/+Oc)2020/06/30(火) 22:13:30.55ID:FtNOu63q0
>>19-24
情景描写がとても手練れていますね。
地方都市の描写では、寂れゆく共通の特徴を提示することで難なく物語の中に導かれ、舞台の都市ならではの特有な世界に浸される。
その描写も上空から俯瞰したような臨場感があります。
その後に、神社をクローズアップさせて物語を進行させるという手法もお見事です。

神社の内部の描写では、生き生きとしたイマジネーションが湧き上がってきます。
人物の衣装や物の配置だけでなく、こっくりさんが描かれている紙や夕日を浴びた五円玉の細部の描写に至るまですーっと頭の中に入ってきます。

27走り出す名無し(大阪府) (ワッチョイW de55-cvHK)2020/07/01(水) 20:27:57.32ID:pyvVFpzR0
>>17
「事実は小説より奇なり」をどう捉えるかという問題でしょうね。
この文言自体は正しい、つまり寄の大小関係はこの通りであると思うのですが、小説が奇なるものであるという前提が頷けません。
事実を切り取って単純化したものが物語なのだから、事実の方が奇なるのは当たり前ではないかと思うのです。

ドストエフスキーは登場人物だけでお腹いっぱいです。
よくあれだけ大勢にスポットライトを当てて魅力的に描けるなと感心致します。
ちなみに私は、好きな作家を一人選べというのは無理難題で死ぬまで結論出ないでしょうが、一冊だけというのなら迷わずゴールズワージー『林檎の樹』です。
映画小説とも一発屋が好きだったりします。
ノーベル賞取ってる人物に一発屋というのもあれですが…

>>19-24
五円玉が動き始めたところで一旦切られているあたり、読者の心をもて遊ぶといいますか惹きつけるといいますか、とにかく続きが気になります。
余りある静けさが逆にヒロインたちの怪しさを演出させているようにも感じられますが、この3人は常識があるだけに非科学的な行動を是と見立てさせることもできる。
そのバランスの保たれた世界が好きです。

28走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 22:49:48.56ID:678LlgFt0
「二人ともお疲れ様」
占いを終えた二人は別の部屋でもとの制服に着替えなおして、愛萌を待っていた。
そこに今回の依頼主を見送った愛萌が戻ってきた。
「どうだった?」と依頼者の反応を気にする菜緒。
「まあ、実際見つかるかどうかだけど、たぶん大丈夫だよ」と愛萌が答え、
「結構詳しく出たから、見つかるんじゃない?」と美玖も言う。
『こっくりさん』へのいくつかの質問を通じて、なくした指輪の場所はかなり限定的なところまで絞り込まれた。
帰るときの依頼者の様子は、半信半疑という感じだったが、とりあえず探してもらうということで、今日は引き取ってもらった。
「また連絡してもらうようにしてるから、見つかったら教えるね」
占いーーとくに探し物の依頼の結果のフィードバックは、依頼者から後日連絡をもらった愛萌が二人に伝えるのが通例だった。
「うん」と二人が頷く。

29走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 22:51:58.68ID:678LlgFt0
「あしたは依頼来てるの?」と美玖が愛萌に尋ねる。明日は土曜日なので、学校は休みである。学校のない週末に、占いの依頼は集中することが多かった。
「ごめん、明日明後日はないの。私、ちょっと都合が悪くて」
「そうなんだ。修行?」と菜緒が訊く。
「うん、ちょっと」愛萌が控えめに答える。宮田神社の後継者である愛萌は、神社の雑務の傍ら、『修行』ーー正確には神道の勉強と禊にはげんでいた。
「頑張ってね」と菜緒が友人に向けて言う。「愛萌はもうお祓いとかできるの?」
「私なんかまだまだ」愛萌が慌てたようすで首を振る。
「そっか」仰々しく否定した愛萌に、菜緒が微笑む。詳しいことはわからないけれど、愛萌ならきっと素晴らしい神職になれるはずだ。
「菜緒、そろそろ帰ろっか」と美玖がスマホで時刻を見て言った。
学校終わりに占いを始めたものだから、時刻は19時近い。
日が照る時間が長い日向の空もさすがに紫色に移り変わって、間もなく夜が訪れる。
「うん。じゃあね愛萌」と菜緒。
「二人ともありがとね。また学校で」
そういって愛萌は、二人を神社のそとまで見送った。

後日、依頼者の女性から、無事指輪が見つかったと連絡がきた。
愛萌はそれを二人に伝えると、いつものように二人はーーとくに菜緒は嬉しそうに笑顔をみせたのだった。

30走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 22:53:23.34ID:678LlgFt0
「行方不明、ですか・・・?」
愛萌は当惑した顔で言った。
「おねがいします・・・」
目の前に座る依頼者の40代の女性ーー上村はうつ向きながら細々といった。
学校から帰り、社務所の番をしていた宮田の前に、ふらりと今にも倒れそうな雰囲気の女性がやってきた。
顔は憔悴しきって生気を失い、ただ事ならぬ雰囲気をただよわせている。
愛萌が何事かと声をかけると、その女性は消え入りそうな声で、「娘を探してほしい」と言ったのだった。
 女性曰く、まだ中学3年生の一人娘である上村ひなのが行方不明となっているらしい。
警察にもすでに届け出ているのだが、何の手掛かりも得られないまま3週間がたつらしい。
「・・・」愛萌はどうすべきか迷った。
確かに占いの広告には、恋占いから探し物まで、何でも承ると謳っていたが、このような依頼は初めてだった。

31走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 22:54:58.50ID:678LlgFt0
「ということなんだけど・・・どう?」
次の日、愛萌は学校で菜緒と美玖にこの件を相談した。
「わたしは別にいいけど」そういって美玖は菜緒のほうに目をやる。
「わたしもいいよ。困っている人がいるなら、力になりたい」菜緒がまっすぐした瞳を愛萌に向ける。
「・・・わかった。でも、もし危ないことになりそうなら、警察の人に任せるからね」
行方不明となれば、上村ひなのが何らかの事件に巻きこまれたとも限らない。
危険なことに首を突っ込むようなら、それ以上は警察の範疇だ。
「うん」二人が了承する。

32走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 22:58:00.72ID:678LlgFt0
週末、学校がない三人は、上村ひなのの母親を神社に呼んだ。
彼女に占いについて説明した後、さっそく菜緒と美玖は、上村ひなのの母と三人で『こっくりさん』を始めた。
「こっくりさん、こっくりさん。いらっしゃったら返事をしてください」
五円玉が静かに動き出す。動いたさきは『はい』の枠。
美玖と菜緒が視線を交わし互いにうなずく。
『こっくりさん』にどんな質問をするのかは事前に打ち合わせ済みだ。
『こっくりさん』が答えてくれる質問の数には限りがある。経験上3つ、よくて4つぐらいだった。
なるべく最短の質問で、重要な情報がつかむ必要がある。


33走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 22:59:55.29ID:678LlgFt0
「上村ひなのさんは、いま、どこにいますか」
質問は単純だ。もちろん、絞りこみが必要になるだろうが、まずは大まかでもいいので、上村ひなのの動向をつかむ。
す、す、、と五円玉が動く。
五円玉は先から止まっていた『はい』の枠から下の50音のひらがなの枠へ進入した。そこから文字盤の左、あかさたな、、と順番に枠から枠に動いていく。
五円玉に指を当てる三人は、固唾をのんでその様子を見守る。
すると、五円玉が動きを止めた。その場所は『や』の文字の上。
しばらくしたのち、五円玉が再び動き出した。次の文字に向かっているのだ。
今度は右。『や』から『ま』へ移り、そこで止まってしまった。
「やま・・・」美玖が小さく呟く。

34走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 23:05:07.50ID:678LlgFt0
『やま』ーーその答えが『山』としても、まだあまりに漠然としている。
「もう少し詳しく教えてください」
菜緒が『こっくりさん』にお願いして、さらに上村ひなのの居場所を絞り込む。
五円玉が再び動き出した。
『ま』から右へ。文字盤上の『た』行の枠に進み、そこで折れて下方への枠へ移動していく。動きを止めたのは『て』の枠だった。
五円玉はしばらく静止したのち、ふたたび移動を開始した。
まず上へ動いていき、次に文字盤の左へと動いていく。次に動きを止めたのは、『ら』の枠だった。
「寺・・・?」と菜緒。その後の五円玉に動きはなかった。
二つ目の質問の答えは『てら』ーー『寺』であろうか。だとするなら、一つ目の答えである『山』と『寺』を掛け合わせた場所が、上村ひなのの場所だ。
菜緒たち三人には、心あたりがなくはなかった。この地域には、山ーー山といっても本当に小さな小山だがーーがぽつぽつとあり、その中の一つに、山頂に寺が建つ山がある。
その寺は『長永寺』というのだが、そこを指しているのだろうか。

35走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 23:06:56.50ID:678LlgFt0
さらに詳しい質問をするか、菜緒と美玖が目を合わせていると、
「娘は・・・ひなのは無事なんですか!」といきなり上村が口を開いた。
菜緒たち二人が彼女のほうへ顔を向ける。
それは確かに、ひなのの母がもっとも気がかりであろう事柄だが、菜緒と美玖、そして三人は事前の打ち合わせで、それを質問するのはやめておこうと取り決めていた。
あまりに露骨な質問であるし、もしも否定的な答えが出ようものなら、ひなのの母にどれほどの苦痛を与えるかわからない。
そのため、ひなのの生死の問いかけは避けて、居場所に焦点を当てたのだった。
どうしてよいかわからず、菜緒と美玖は愛萌のほうに顔を向ける。
唇を真一文字に結んだ愛萌は逡巡した。上村の母は、必死な表情でこちらを見ている。
「・・・質問して」愛萌は二人に言った。
固い表情の二人は、五円玉に視線を戻す。そして菜緒が問いかけた。
「『こっくりさん』、『こっくりさん』。上村ひなのさんは生きていますか?」

36走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/01(水) 23:08:00.24ID:678LlgFt0
静寂のなか、五円玉が動き出す。
『ら』から右へ、『あかさたなはまやらわ』の枠の真ん中、『は』の枠まで横移動すると、こんどは上へと折れて、五十音の枠から出た。
上にあるのは右に『はい』、左に『いいえ』の枠だ。
その二つの枠の間に五円玉が移動した。
「・・・・・・」
誰もが息をするのも忘れ、五円玉の行方を見つめる。
上村ひなのは生きているのか、それとも・・・。

しかし、五円玉は、『はい』と『いいえ』のはざまで、動くことはなかった。

37走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ a37c-o+ap)2020/07/02(木) 22:44:54.50ID:jVOIL19R0
>>27
ちょっと前に東京MXという放送局で、「文豪アルケミスト」というアニメをたまたま観たのですが、
その中で志賀直哉が太宰や芥川に、「小説は写実的であるべきものだ」とダメだししていましたね。
(他の作業をしながら観ていたので、かなり適当かもしれません。)
大阪府さんの立場はそのアニメの中の志賀直哉に近いものに思えます。
そういう視点でなら、大阪府さんの考えは身に沁みます。

38走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ a37c-o+ap)2020/07/02(木) 22:56:11.53ID:jVOIL19R0
ただ、「事実は小説より奇なり」については、違った考えを持っています。
小説でも、テレビドラマでも、現実ではあり得ない設定がよく見られます。
たとえば、何らかの事情で幼い時に離れ離れになったお互いの顔も知らない兄弟が大都会の同じ棟のアパートに住んでいたというような。
どれだけの低確率の偶然なのかと突っ込みたくなります。
ただ、小説にはそういう無茶な設定でも吸収できる魔力があります。

ある人に宝くじの一等賞金が当たる確率は天文学的に低い数字です。
でも、誰かには当たる。
それと同じように、日本だけでも1億人以上いるので、あり得ない設定でも、それに該当する誰かはいるかもしれない。
そして、小説では基本的にはドラマティックなストーリー展開が望まれるので、そういう人間が登場人物となる。
つまり、焦点を当てるのを無作為の個人から数奇な運命をたどった個人へと切り替えています。
そのとき、偶然は必然へと座標変換されるというわけです。
そういう意味では、小説のほうが事実よりもやはり「奇」であるという見方を個人的にはしています。

39走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ a37c-o+ap)2020/07/02(木) 22:57:30.11ID:jVOIL19R0
『林檎の樹』という作品どころかゴールズワージーという作家すら知りませんでした。
今はやることが渋滞しているので、余裕ができたら読んでみようと思います。

40走り出す名無し(東京都) (ワッチョイ a37c-o+ap)2020/07/02(木) 23:01:40.72ID:jVOIL19R0
>>28-37
うまいですね。
今のところ、行方不明となっている少女をこっくりさんで占うというだけの話なのですが、
登場人物の一挙手一投足がつぶさに描写されているので、物語の中に吸い寄せられてしまう。
丁寧に物語をつくりあげようとしている誠実さが垣間見えます。

41走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/02(木) 23:26:31.00ID:OS19d3nj0
「どういうことだろう・・・」
謎の事態に、三人は社務所の一室で顔を見合わせていた。
結局、その後、五円玉は動かず、『こっくりさん』に呼びかけても反応はなかった。
また、『やま』と『てら』の答えを頼りに、それが該当しそうな近くの小山に建つ寺『長永寺』に上村ひなのを探しに行きもした。
しかし、寺の敷地を探しても、寺の住職に尋ねても、上村ひなのを見つけることはできなかった。
重い空気が三人にのしかかる。全員が、無力さと申し訳なさを痛感していた。
上村の母親とはすでに別れていた。彼女に協力しておきながら何の力にもなれなかった無様な有様に、ただ頭を下げるしかなかった。
上村の母は何も言わずに、だが一層力を落とした様子で去っていった。
こんなことなら、やらないほうがましだったとすら思える。彼女に多少なりとも期待を持たせてしまったのに、なにも得られなかったのだから。

43走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/02(木) 23:31:12.83ID:OS19d3nj0
後日、三人は上村の母親の了承を得て、ひなのの家の自室を訪れた。
白を基調にした部屋で物は少ないが、かわいらしいさのある部屋だった。
三人が、ひなの失踪の手掛かりとなるものはないか、部屋の中を探す。
ひなのの母は、その様子を見ているのかいないのか、元気のない瞳のまま、部屋の入り口の近くに立っている。
「パソコン・・・」菜緒が、ベットのそばにある小さなガラステーブルの上に置かれた薄いノートパソコンに注目する。
「開けてみる?」美玖がひなのの母の了承を得てから、パソコンを開き、電源を入れる。
だが、
「パスワードがかかってる・・・」
画面には、ユーザー名とパスワードの入力画面が表示された。
「上村さん、パスワード知りませんか?」愛萌が尋ねる。
しかし、ひなのの母は首を横に振った。
それもそうか、と愛萌は唇を噛む。


44走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/02(木) 23:32:29.12ID:OS19d3nj0
「こっくりさんに聞いてみようよ」美玖が素早く提案した。
「そっか」美玖の機転にはっとする菜緒。「でもこれ、パスワードだよね・・日本語じゃないんじゃない?」
「なら、つくればいいじゃん」
すると美玖は持ってきていたバックから、紙とペンを取り出した。
紙をパソコンのあるテーブルに広げ、素早く枠線を引き、アルファベットと数字を書き込んでいく。
「準備いいね、美玖・・・」
即席の文字盤ーアルファベット版ーが作られるのを見ながら、菜緒が呟いた。
「ふふ」美玖が得意げに笑みを浮かべる。「小文字とかも書いてたほうがいいのかな」と独り言ちる。
「よし、できた」

45走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/02(木) 23:34:56.51ID:OS19d3nj0
「こっくりさんこっくりさん・・・」
いつもの質問でこっくりさんを呼ぶ。
今回、『こっくりさん』をしているのは菜緒と美玖の二人である。
愛萌はそばに控え、それを見守る。

46走り出す名無し(宮崎県) (ワッチョイ 468f-ISKm)2020/07/02(木) 23:36:05.42ID:OS19d3nj0
「ひなのさんのパソコンのパスワードを教えてください。」
五円玉が動き出す。どうやら文字盤がアルファベットであっても、『こっくりさん』はできるようである。
初めにとまったのは『m』と書き込んだ枠だった。
再び動き出した五円玉が続いて『o』の枠で止まる。
意外なほどすんなりと事は運び、ひなののパスワードと思しき文字列が示しだされた。

元スレ:http://fate.5ch.net/test/read.cgi/hinatazaka46/1593173589

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